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『週刊大衆』連載中 平成16年11月8日から40回の連載記事から 宇宙に訊け(そらにきけ) 其の六
★ 来世の宣伝マンが薔薇色の「死後」を説く 私はパソコンなんてものは一切やらない。使い方もよくわからないし、そもそも使いたいと思ったこともな〜い。このホームページも事務所の者が私に代わって、私が話したことを更新してくれている。 しかし最近は、このパソコンと自殺が大いに関連しているというじゃないか。関心を持たざるを得ないわけだよ、さすがの私も。 インターネットというらしいな。それくらいは知っているぞ。このインターネットでもって自殺志願者を募っては、実際に何人かで本当に自殺を実行してしまう大バカ者が、後を絶たないそうじゃないか。 ご丁寧なことに、楽に死ねる方法や必要な道具まで教えてくれるらしい。 書き込みとやらには「生きていてもいいことがないから早く死にたい」「ひとりじゃ寂しいから、一緒に死んでくれる人はいませんか」と、若者たちの、なんとも浅はかな言葉が、綿々と書かれているそうじゃないか。バカは死ななきゃ治らないというが、こういうバカは、まず死んでも治らない。私が断言してやるよ。 それにしても、だ。いまの日本では、中高年の自殺は若者以上に多いようだな。毎年、3万人もの日本人が自らの命を絶っている。これは交通事故で死ぬ数を大幅に超えている。 なんとも嘆かわしい。なんとも愚かなことかと思う。 リストラ、家族の崩壊、借金苦、失恋、愛する人の死、いじめ……そりゃあ、自殺の理由も様々だろうよ。事情を知れば、つい同情したくなるが、霊界というところは自殺者にはとても厳しいんだ。そもそも自殺したからといって、苦しみから解放されるわけではないんだよ。 自殺というのは、この世でにっちもさっちもいかなくなって、近道して早くあの世に行くことだ。しかし、あの世はそう簡単に自殺者を受け入れてくれない。霊界はそんな自分勝手な死を認めないんだよ、これが。 あの世から見て、現世は修行の場であり、「あなたにはまだ足りないところがあるから、それを現世の荒波にもまれ、補ってきなさい」と、霊界側はその人間を送り出したわけだ。だから、現世で様々な苦しみや悩みが課せられることになる。そうした悩みや苦しみを「乗り越え、自分の品格を高めることに利用しなさい」というのが、霊界の深慮遠謀なんだ。 その修行の時間として、たとえば50年、60年、あるいは人によっては80年という寿命が与えられているわけだよ。その寿命を全うした死だけが、霊界へ行くための資格となるんだ。つまり、自殺は、現世が厳しいからといって霊界の命令を無視し、修行期間を勝手に切り上げて、あの世に帰ろうとすることなんだよ。簡単にいえば命令違反だ。 こういうことをして霊界が許す道理がな〜い。あの世は、この世から逃避した人間が行くための場所ではないんだから、自殺者は霊界からそっぽを向かれて当然なんだ。 ★ 孤独この上もない世界で味わう苦痛は地獄以上 じゃあ自殺した人間はどこへ行くのか。 もう20年以上前になるだろうか。俳優の沖雅也君が「おやじ、涅槃(ねはん)で待つ」と言い遺して自殺したのを憶えている諸君は多いだろう。涅槃というのは仏教用語で、一切の欲望が完全に消え去り、苦しみや悩みがまったくなくなった最高の世界のことをいうんだ。文字通りの天国だよ。 しかし死者に鞭打つわけではないが自殺者が涅槃に行くことは有り得ない。 自殺者には自殺者のために用意された場所があるんだ。 そこは孤独この上ない世界だ。自分の命が限りなく尊いことが、しっかり霊魂の根底に染みつくまで、自由に行動することを奪われてしまうんだ。 東洋では、それを「首から下を壺に入れられ身動きできない状態」といい、西洋では「身体に根が生え、1本の木と化し、行動の自由を奪われた状態」というんだ。 それがどんな状態か、自分が森の奥深くで1本の木となって生きることを想像してみるといい。 ときとして、風ぐらい吹くだろう。葉や枝はそよぐが、これは樹木自身の意思じゃないからな。 現世の木々なら太陽の光、大地の養分と水を採り入れ、自らを成長させ、花を開き、実を結び、次なる生命を育むこともできるよ。 だが、自殺者の森の木々は、光を浴び、成長することもできないんだ。 霊界には、至上の存在である唯一神が放射する、柔らかくも温かい、すべてを包み込む光が降り注いでいるんだが、自殺者の木々には、この光が届かないんだ。この光のない、湿気を帯びたジメジメした場所で、身動きもできずに千年、万年と暮らすんだぞ。その苦しさ、つらさといったら、地獄以上だろうよ。 悲しいことだが、われわれ芸能界、映画界にも自ら命を絶った者は多い。 私と非常に関係の深かった映画監督の五社英雄監督も自殺願望の強かった男だよ。一見、豪放磊落に見えるが、中身は神経質なヤツなんだ。自殺未遂が二度もあった。 私の家に来て自殺を予告したこともあったな。当然、私は「自殺しても、向こうへ行けば、もっと苦しむぞ」と、こんこんと説得したよ。結局、あいつはガンでこの世を去った。 映画監督で自殺したといえば伊丹十三だ。私は『マルサの女2』で一度、仕事をした。伊丹監督の演出というのは、自分のイメージ通りに役者にセリフをいわせるんだな。俳優に、ある程度任せて楽しくやるという余裕のようなものがないんだ。だから私とは、まったくあわない。 「君とは、もう二度と仕事せんよ」と、はっきりいってやったよ。だが、彼の撮った映画はいい。それは認める。 俳優としてはもう一つだったが、監督としては一流だった男だ。 そんな伊丹十三が選んだ道が自殺だったとはな。 なんとも惜しいよ。 《次回につづく》 |
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