丹波哲郎が語る「死後の世界の実相」

〜第39回〜
《2003年11月号 掲載》


 
             死の恐怖からの解脱〈第13回〉

    
  ☆大宇宙の法則

 何も知らない幼児に「死んだら、人間はどこへ行くの?」と訊かれたら、どう答えるだろうか。

 「焼かれて灰になって、お墓のなかに入れられるんですよ」と答える人もいるだろうが、多数の人は「空の星になるんですよ」とか「天国に行って楽しく暮らすんですよ」などと答えるだろう(たとえ宗教をまったく信じないような人でも)。

 これは、私に言わせれぱ、人間の本能が真実を語らせているのである。すなわち、自分の魂か「あの世」からやって来て、肉体が滅びた後は、また「あの世」(空の星、天国)に戻って行く……ということを潜在的に知っているのだ。

 死はすべての終りではなく、あの世で楽しく暮らすためのステップなのだ。

 みんなに感謝しながら「さよなら」って明るく死ぬには、どうしたらよいか。

 それには〃素〃の人間になることだ。邪悪(よこしま)な心があったり、すぐに損得に結びつける算盤(そろばん)をはじいたり、人の心理の表裏を考えたりするようなことをせず、子供のように純な心をもった人間が理想である。

 素直は、純粋に通じる。素直な人、すなわち純粋な人は、私欲かうすい。不純物(欲)をたくさん身につけた人間は、現世への執着が強すぎて、死んでも死にきれない状態となる。

 神から万人にそれぞれ授けられた、あなたの能力、あなたの置かれている今の立場を、素直に見つめていただきたい。すなわち、分に応じて、自然にさからわず、明るく笑顔で生活していくことが必要なのだ。

 明るく、素直に、あたたかく!

 このくらい名言はないだろう。ナムアミダブツもナムミョーホーレンゲキョーも結構だか、もっとわかりやすい表現のほうがよろしいのではないか。つねに、心を「明るく、素直に、あたたかく」持ち続けたいものだ。

 この現世では、さまざまな宗教や教えがあって、それぞれに人生観、倫理観を主張している。そのために、攻撃や衝突も多い。

 本来、宗教に熱心な人間は、十分に魂を磨いて、誰よりも早く霊界で心が素の状態になっていいはずなのだが、特定の宗数や宗派に属していた人間は、他を頑迷なまでに認めず、邪教扱いし、排斥してしまったりするのである。

 したがって、エマニュエル・スウェーデンボルグが言っているように、「特定の宗教にとらわれていると、死や霊界について、かえって誤った考えをもつことが多い」のである。むしろ、宗教の教義によって説かれる「あの世」の理論よりは、一般の近似死体験者や霊能者の話にみられる「あの世」の体験のほうが、死後の世界や霊界について忠実な姿を伝えていると思われる。

 あの世では、宗教というものは、まったくないといっても過言ではない。すべての枠は外されて、同一の神のもとに暮らす。だから、たとえば仏数徒とキリスト教徒が、あの世で睨み合っているということもない。

 しかし、信仰をもつことは大切である。霊界では、それぞれ一宗一派を創った先達たちが悟った真理が、光を放っているのだ。

 宗教の違いによって、さまざまな呼び方をされているが、霊界の上に坐す神は、それらのすべてを包含する絶対神である。すなわち宇宙の法則、宇宙の秩序なのだ。したがって地球だけでなく、宇宙に万遍なく存在していることになる。

 私自身、どの宗致を信じているというわけではないが、神の有難さというようなものを身をもって感じていることだけは確かである。あなたにも、ぜひこの幸福感を知っていただき、味わっていただきたいと願っている。そして死というものを、どんな人にも楽しんで迎えられるようになってもらいたい。なぜなら、それが私の使命なのだから──。

 丹波哲郎(本名、正三郎)「霊界の宜伝使」になるために俳優になったようなものだ。私は今、霊界研究が自分のライフワークだと確信している。「霊界の歩く広告塔」が、魂の底から天織だと思っている。その集大成として、少しでも多くの人びとに「霊魂」や「霊界」のことを知らせることが、私が生まれてきた最大の課題だと悟らされたのである。

 私は学者でもなければ、科学者でもない。霊能者でも超能力者でもない。ごく普通の人間だが、たまたま俳優を職業としているために、私の霊界についての講演に、立錐の余地もないほどの聴衆がつめかけてくださっている。有難いことだ。論証は学者にまかせ、私はただ、さまざまな現象や証言と、実感から得た確信を述べるだけである。

「死んだら、すべてが終る」、もしあなたがそう思っているとしたら、それはたいへんな思い違いである。人間は未来に展望をもってこそ、今を生きる活力を得られるのである。

 ちょっとした病気をしても死を意識し、憂鬱な毎日を過ごしている人も多くいる。車で高速道路を100キロ以上のスピードを出して走ると、視野が極端に狭くなってくる。それと同じように、死の恐怖に取り憑かれると視野が狭くなり、死のことしか考えられなくなる。いたずらに死への恐怖をつのらせ、死に脅えながら生きていても、しょうがないではないか。

 胃病を患って癌ノイローゼになり、治るべきものも治らず、自ら死を早めてしまうケースも珍しくない。「死んでもともと、霊界での楽しい生活が待っている」ぐらいな気持ちでいれば、病気だって克服できようものを……。

 人間、死んでも生きられる。
 生きることは面白い。
 私は死ぬのが楽しみだ!

 死とは、本来の姿である霊として再び「生き返る」瞬間である。山口百恵さんの歌ではないが「いい日、旅立ち」なのだ。死とは希望に満ちた明るい出発、生は苦難の山坂への挑戦である。

 何度も言うように「死」は移行であり、霊界という素晴らしいところで暮らせることであり、「死」は恐れ悲しむどころか、喜々として往生するべきものなのだ。この世に別れることは「みなさん、お先に、あの世に行きますよ。後からいらっしゃい」と考えれぱよいのだ。だから自分が死んだと自覚したら、「あの世へ行って、後からくる家族たちに教えてやろう」と思って、むしろ意気揚々と勇むような心掛け、死にざまが大切なのである。

 あの世がなければ、この世もない。

 この世とあの世は、切っても切れない関係にある。死後の世界は、けっして妄想ではなく、現在、我々が住んでいるこの地球のような厳然たる実体なのだ。そして、それを知ったとき、私たちの人生は、死の恐怖を越えて、愛に満ちたものになるはずである。霊界の実相を知れば知るほど、人間界で愛を培うことがいかに大切かが悟れるようになる。

 人間は、何のために生きているのか?
 自分も他人も幸福になるためだ。

 心に愛を育て、それを他人にふりそそぐ。そうすることにより、あなたの品性や人格は高められる。

 この世を終えたとき、彼岸へ持っていけるお土産は、金でもなく、地位でもなく、明るく素直な、あたたかい心だということは、絶対に必要な事項である。

 我々は現在、地球規模の大地殻変動の時期に生まれ合わせている。大変なことだ。世界各地、至るところで大噴火や大地震が起き、異常気象(大寒波や大洪水)が相次ぎ、重大な環境破壊が続発している。それに伴う国際的な食糧危機、破壊兵器の乱用で、人類は自滅の一途を突き進んでいる。それもこれも、人類があまりにも霊的なことを無視して、物質的なものに傾倒してしまった結果である。

 世界中が憎悪や貧欲に燃え上っている今こそ、我々は暗黒の海の灯台のような存在にならねばならない。今こそ、この20世紀末の人間界が霊界と地続きであることを、一人一人が確信せねばならぬ重大な時期なのだ。

 これからも私は、何度でも何度でも、この世とあの世は地続きだと、叫び続けていかねばならない。命のある限り……。

 この連載では、多くの先達の方々の書籍やレポートを参考、
   引用させていただいた。心から、深い感謝の念を捧げたい。

      
   
 
バックナンバー
1 私が霊界研究をはじめたきっかけ 2 私はなぜ俳優になったのか
3 死後の世界をかいま見た人びと 4 死後の世界を著した様々な書物
5 運命と宿命 6 死後の世界の様子 車と運転手 1
7 死後の世界の様子 車と運転手 2 8 死後の世界の様子 車と運転手 3
9 死後の世界の様子 車と運転手 4 10 死後の世界の様子 車と運転手 5
11 ある講演会から《 1 》 12 ある講演会から《 2 》
13 ある講演会から《 3 》 14 ある講演会から《 4 最終回 》
15 丹波哲郎とO.S氏に聞く 【 1 】 16 丹波哲郎とO.S氏に聞く 【 2 】
17 丹波哲郎とO.S氏に聞く 【 3 】 18 丹波哲郎とO.S氏に聞く 【 4 】
19 丹波哲郎とO.S氏に聞く 【 5 】 20 丹波哲郎とO.S氏に聞く 【 6 】
21 丹波哲郎のメッセージ 22 来世研究会全国大会より
23 来世研究会全国大会 2 より 24 丹波哲郎に聞く1
25 丹波哲郎に聞く2 来世研究会を語る 26 丹波哲郎が日本の将来を憂う
27 連載 死の恐怖からの解脱 〈 1 〉 28 連載 死の恐怖からの解脱 〈 2 〉
29 連載 死の恐怖からの解脱 〈 3 〉 30 連載 死の恐怖からの解脱 〈 4 〉
31 連載 死の恐怖からの解脱 〈 5 〉 32 連載 死の恐怖からの解脱 〈 6 〉
33 連載 死の恐怖からの解脱 〈 7 〉 34 連載 死の恐怖からの解脱 〈 8 〉
35 連載 死の恐怖からの解脱 〈 9 〉 36 連載 死の恐怖からの解脱 〈 10 〉
37 連載 死の恐怖からの解脱 〈 11 〉 38 連載 死の恐怖からの解脱 〈 12 〉