故・池田貴族さん (元心霊研究家)

   【第63回】 《2006年9月〜10月》


   平成8年、テレビ東京で『丹波哲郎の不思議世界』が放送されました。
   この番組は、ゲストの不思議な体験を聞き、丹波哲郎が解説していく内容でした。
   番組の内容を日本文芸社から出版しました。(絶版)
  
『本当にあった霊体験・臨死体験17人の証言』というタイトルです。
   その17人の体験談を、抜粋し御紹介していきます。

   以前も一部御紹介した内容もありますが、再度詳細に掲載していきます。
   対談形式ではありませんが、お許し下さい。


  
       幽体は生霊となって瞬間移動する

            故・池田貴族さんの体験〜


     
     金縛りや人格まで変える憑依霊


        
         取り憑いた霊が部屋に100体

丹波  池田貴族さんは、毎年のように引っ越しをする。決して引っ越しマニアというわけではなく、霊に関わることでそうせざるをえない状況におちいるのだ。

池田
 「仕事でミステリースポツトとかいろんな場所に行く場合、自分にガードをしないんです。ガードをしてしまうと何も起きないので、テレビや雑誌の仕事では困るわけです。だから自分をオープンにしておくわけですが、そうすると当然、取り憑かれる。取り憑かれるとわかりますね。首の後ろのほうからぐっと入ってくる者があったり、肩をつかまれるとか……。

 僕は、ミステリースポットヘ行くと非常に冷静に、静かにやるんですけど、突然、物を壊したくなったり、口調も荒々しいヤンキー言葉になったりする。一瞬、一瞬、別の意識が出てくるので、自分ではまったくわからないんです。長時間取り懸かれている場合はわかるんですが、一瞬のことだと自覚がなくて、自分はいつもと同じようにやっているつもりが、周りからみると変だよ、ということになるわけですね。

 そういう仕事が、夏になると毎日のようにあるわけですよ、一日に五、六ヵ所。そうすると、夜中に帰ってきて、そのつど除霊していられないですから。もう眠いから寝ちゃえ、ということになる。

 次の日もそういう仕事をして帰ってきて寝る。そうして自分の体に10体、20体とたまってしまうと、一気に払えばいいや、と放っておくんです。それが体からスルスル抜けはじめて、自分の部屋に充満して白いモヤ状態になってくるわけです。霊とか念とかが、どうしても家にたまってきちゃうんですね。多いときは100体くらいたまることがある。

 そのうちに物音がしはじめたり、人が現れたり……。僕が目が覚ますと、40歳ぐらいの男がウーッと伸びをして、家から出勤していくんです。この霊は女友達が来るとレイプしようとしたりする、とんでもないヤツです。部屋にある観葉植物はことごとく枯れてしまうし、僕自身も体重が激減したり、軟骨が飛び出してくる原因不明の症状が出たり。とにかく、にっちもさっちもいかなくなるんで引っ越すしかない。その繰り返しですよ。

 東京へきて、10年の間に12、3回、ひどいときは半年で引っ越したこともあります。お金がかかってしょうがないんで、今は知り合いの霊能者に結界を張ってもらって、霊関係のものを置く専用の部屋を作るようにしましたけど」



丹波
 霊は部屋に置いたまま引っ越してしまうという池田貴族さん。そのあとに入居してきた人に霊能力がなければ何も感じないのだが、敏感な人にはありがた迷惑な置き土産ということになってしまう。

 しかし、池田さんには霊を引きつけてしまう力があるので、結局はどこへ行っても同じことで、やはり霊とは付き合わざるをえないはめになる。

 ときには、引っ越し先が、新たな悩みの種となることもある。霊能力の強い人にとって、お墓の近くは禁物なのだ。墓場は、どこへ行っても誰も相手にしてくれない霊たちが、仕方なく集まってくる吹き溜まりのようなところで、宴会でもやっているのではないかと思うくらい騒がしい。できれば、こんな墓の近くは避けるにこしたことはない。

 実際、私の友人のご婦人が、ある人の家に招かれて行ったところ、6畳間に300人ほどの人がぎっしり詰まっているのが見えたという。

 重なり合って畳が見えないほどの人、人、人。霊には慣れているはずの彼女もさすがに驚いたらしく、草々に失礼したそうだ。彼女のように、霊が見えてしまう者にとっては、とても暮らせたものではないが、見えない者にとっては心地よいわが家なのだ。


                                            (つづく)