第46回 ゲスト ダーティ工藤さん (映画評論家・監督)


 【第46回】 《2004年8月号》

   前月から掲載する内容は、この春出版した『大俳優 丹波哲郎』の中で、
  霊界研究に触れた部分を御紹介します。
   対談相手は、この本を編集した「ダーティ工藤」(映画評論家・監督)さんです。



       霊界の宣伝マンと霊界映画 2


 英国のホテルでのこと。深夜睡眠中、霊人(中国人の双子の子供と英国人の幽霊)と対面した話の後、次のような話が展開しました。

工藤 結局それは、何かの因縁というか因果があるんでしょうか?

丹波 エマニュエル・スウェーデンボルグというのが、51〜83歳までの30年間、霊界研究していたんだが、そのきっかけもやはりロンドンのレストランで不思議な体験をしたことからはじまった。
 注文をしている間に、ふと床を見たら、床一面が蛙や蛇とか、あんまり色気のよくない生き物で埋め尽くされていた。そこんところは現実そうなっていたのか、あるいは白昼夢のように見たものなのかははっきりしていないのだけど。
 そこで彼は、お年寄りにも会ったというんだ。彼はそのお年寄りに、何だか古い言葉で「汝、食べ過ぎるなかれ」みたいなことを言われたたらしいんだ。そんな風に予告があるんだ。
 だから私は、ロンドンのホテルでの体験をどうとらえているかというと「これから霊界研究をするにあたって、何か心が揺らいだときには、この体験を思い出せ」というメッセージを込めて、三人はでてきたんじゃないかなぁと思っている。

工藤 それは、ある種確信みたいなものですか?

丹波 そうそう。だから揺らぐことはない。お前を霊界から守ってやる、とかそんな意味で出てきたんじゃないかな。そういう確信を私は抱いている。

工藤 他に実際に幽霊を見た体験はあるんですか?

丹波 ない。あれが最初で最後だね。

工藤 そうですか、それではちょっと話を戻しますと『大霊界』も最初は丹波さんが、監督をする予定だったんですよね。

丹波 そうそう。で、途中から
「ダメだ、俺には出来ねェや」てんで「面倒くせェや、スクリプターを監督にしちゃえ」ていうんで、石田照ってのが監督になった。でも、実質は岡崎宏三キャメラマンがほとんど撮ったんじゃないかな。

工藤 この映画は、学研と共同製作だったんですよね。

丹波 そうそう観客でいっぱいだったよ。今どきの映画館じゃありえない風景だだった。私が宣伝で大阪に行ったら映画館に入れないんだから。人で舞台に登れないんだから。渋谷なんて、次の回を待っている者でギシギシじゃない。あんなに入ったってのは、近頃の日本映画にゃあり得ないことだもの。
 それほど大勢の人が霊界というものの存在がどんなものなのか、見たい聞きたい知りたい。要するに死ぬのが恐い。それ以降私は、何万人という方達から感謝されたなあ。

工藤 2作目は、かなり制作費がかかっていましたね。

丹波 そう。あまりにも金をかけすぎたねぇ。パート1(『大霊界』)が儲かったからね。調子に乗ったねェ。(笑)

工藤 (笑) でも、どうしてもそうなりますよね。パート1がヒットしたらパート2はより良いものを作ろうとして、さらにお金をかけるというのが……。
 スケール感で言ったら『大霊界2』の方が、遙かに上ですものね。

丹波 もう規模が違う。階段でエキストラ1万人が降りてくるだけで、大変だ。
衣裳は全部こっちで用意したから。

工藤 今だったらほとんどCG処理にしちゃうんでしょうけど、あれは全部本物の人間ですから迫力が違いますよ。今だったら二度と撮れないシーンでしょうね。

丹波 そう思うな。もう、そういうバカなことはやらない。
 東宝のTさんにからかわれたなあ。
 『大霊界』の構想を練っていた時ある有名作家ら二人に脚本を頼んだ。
 二人は「箱根の近辺で、料理が美味しくて、団体客が入らなくて、岩風呂のあるところ探してくれ」と言う。で、箱根の裏街道にある、条件通りの旅館を見つけて、そこに2ヶ月こもって、「その間、丹波さんに来てもらっては困る」というのだ。
 また「これをこのまま原稿のまま読んでもらっちゃ困る。製本してから読んでくれ」と自信満々。製本屋に行ってホン(脚本)が出来たとき、丁度何回目かの『砂の器』のロケーション出発。それで、東京駅から新幹線が出るとき皆に渡して「電車が動いたら開けて読んでくれ」なーんてやってね。
 そしたら横浜に着く頃には、もう嫌になっちゃった(笑)。
 一番初めは、Mさんに頼んだんだ。ハワイまで呼んで、ハワイでお土産買って、で、こうでこうでと色々話をして。「承知した」ということで、4ヶ月に一行も書かないで断ってきたよ。
 その他、黒澤組の作家のをはじめ数人の作家に頼んだがダメ。結局霊界ものっていうのは、誰にも書けないんだな、というんで、私が書いたんだ。

工藤 長年霊界研究されている丹波さん以外に、ホン(脚本)が書けないのは当然だと思いますよ。
                                            (つづく)