今月のゲスト 美術家 横尾忠則さん

 【第43回】 《2004年4月号》


   今月も、学研から出版されたムック本から対談記事の抜粋です。
   『大霊界〜丹波哲郎の世界』というタイトルのこの本は、
   霊界ブーム全盛期の頃のものなのですが、
   その内容は今読み返してみてもなかなか新鮮です。

   1989年2月1日発行(映画『大霊界』が制作された当時)されたものです。

   霊界研究は、日進月歩です。時代と共に多少の説は変わっていきます。
   ですから、若干内容を現在の丹波先生の説に沿って修正して掲載いたします。



          指導霊というのが現れて…

横尾
 僕が神霊や両親から聞いた話を丹波さんに、もし参考になればと、いろいろお話しようと思ってましてね。

丹波
 是非とも聞かせてください。

横尾
 僕の指導霊というのが、ある日突然現われたんですよ。私はあなたの指導霊だと。指導霊というのは、その時によるんですけど、大きい仕事をするときには1000人くらいつくらしいんですね。

丹波
 1000人? ははっー。じゃ、私が映画を作った時は、えらいついていただろう。

横尾
 そうですよ。何か世の中の為に役立とうとする仕事をやろうとしている、そういった時には、指導霊がワーッとつくらしいんです。暫定的な時間かもしれませんけどね。

 僕にたくさんいる指導霊のうちの一人が、名前を名乗ってきたんですよ。赤木健一だって。そして、僕を挑発してくるわけですよ。

「あなたは本当の悲しみを知らない」と。

僕も、「そんなことはない。僕だっていろんな悲しみを経験している」

「でも、それはたいしたことではない」というわけです。

「そういう本当の悲しみを知らないと、あなたは絵を描けない」

「あなたの人生は思い違いと偶然の人生だ」と言ったりもする。

「ああ、それは大変結構だ。アーチストだからそれでいい」と僕もやり返す。どうも、大正時代に地方で文芸評論をやっていた人らしいんです。

丹波
 それはあなたの肉体的な祖先じゃないの?

横尾
 で、聞いたんですよ。そうしたら、その人はうちのお袋のほうの祖先で、戸籍の上では抹消されているらしいんですよ。勘当されたみたいですね。

丹波
 そうですか。とにかくあなたの場合は、非常に貴重な生き証人みたいなもんだ。霊界研究というのは、何といったってアンテナを持っている人を、いまや国をあげて大事にしている時代。昔はうさん臭くいじめられてね。化け物の出来そこないみたいに見られた。

横尾
 横尾さんはそういう話さえしなければいい人なんだけどと、僕はいわれたことがありますからね。(笑)
 世渡り上手に生きるためには、あんまりそういうことはしないほうがいいですよと。



     霊界の中に地球が浮かんでる


丹波
 原宿の竹下通りでもって、400何人の15歳前後の子供にアンケートをとった。そうしたら、僕の映画を見たいというのが、2人に1人の割合でいた。


横尾
 50パーセントですか。


丹波
 子供ですよ。で、NHKの5000人のデータでも、霊界に関心を持ち、なおかつそれを信じている人は、なんと18から23歳くらいまでが圧倒的に多い。予想もしなかった。

 配給先の松竹富士(現在は「松竹」に吸収合併)も小首をかしげている。ところがそれだけじゃない。今まで全然映画を観ない人、京都の元芸者の70歳くらいのおばあちゃんが、この間いったんですよ。
 
 「先生、私は50年くらい映画館に行ったことがない」それが、今度は張り切って20回観るという。20回観るということは、朝からお弁当を持って、おばあちゃんにとってはいわば命がけなんだ。ストーリーなんかどうだってよろしい。ただ、1回目はさらっと観て、2回目からは、自分が疑問だなと思うところを重点的に観るという見方でもって、20回観て安心して死にたいというのが根本なんだ。

 みなさんなんかも霊界というものは、あればあったほうがいいなあという感じなのか、どうなんだろう。生命が永遠ということは、人間界だけで終わっちゃうんじゃないということ。生命が永遠と一口でいうけれど、この言葉の重みたるや、大変なものなんだね。

 僕がこの世とあの世は地統きなんだというと、みな笑うけど、ほんとうに地続きなんだ。いまさっき横尾さんがおっしゃったことなんか、まさに地続きもいいところで、同じなんだ。とにかく、この霊界全体の中に地球が浮かんでいるということなんだ。地球の内部も霊界なんだ。


横尾
 次元というものは交錯したものだからね。


丹波
 それを端的に、昔の人がいっているのが「神隠し」だ。神隠しという以外に表現しようがない。うまい表現だね。実にうまい。

 戦争もまだ初期、日本軍が優勢の頃に、海軍の哨戒機が基地に打った打電というのが現在残ってるね。

「いま空が割れる」と打電して、それっきり影も形もない。その日は天気晴朗、アメリカ機一機もなし。いま空が割れる。軍人が「助けてくれ」なんて言葉使ったら、もう駄目なんだ。それがとっさに使ったんだからね。とっさに打った。それが残っているんだ。

 横尾さんは霊界というものを一口にいうとどういう……。


横尾
 僕は、霊界はそんなに研究していないから分からないですけれど。


丹波
 僕なんかは、人間界とそっくりというふうに思うんですがね。


横尾
 僕は宇宙というふうにとらえていますね。それで向こうからこちらのほうに入ってくる場合には、向こうにとっては、何か霊界に行くような感じじゃないでしょうかね。

 それで、生まれ変わるのが嫌だ嫌だって、駄々こねて逃げ回るのもいるらしいですね。結局、しばらくだんだん催眠術をかけるみたいに、冬眠させるみたいにしながら、上手にこちらのほうに戻しちゃうらしいんです。


丹波
 それで、人間界に出て来るのは大変な抵抗があるわけですね。


横尾
 向こうの者にとっては、抵抗があるみたいですね。あとは、指名を受けて出て来る者。それは神霊と話し合いの上で出て来ているんですね。

 丹波さんなんかは、もちろん向こうで、神霊と語し合いをして、それで霊界の宣伝マンとして活動してほしいということで、丹波さんもそれを認めて来られたと思うんですね。

                                          (つづく)