ジョージ川口さん
( ドラマー )
   
 

 【第26回】 2002年10月掲載用
    (今回の対談はテレビ東京『丹波哲郎の不思議世界』より引用しています)


  今月は、世界的なドラマーである「ジョージ川口」さんとの対談です。
  元戦闘パイロットだった川口さんは、飛行機墜落という事故に遭遇しました。
  その時の凄まじい体験談を中心に御紹介します。


       飛行機墜落事故で骨が砕けた

丹波 川口さんは、戦時中に大変な事故にあったそうですね。

川口 
そうなんです。飛行学校を出たあと、操縦の教官をやっていたんですが、その時、墜落事故にあったんですよ。 生徒たちが見ている中で模範飛行をやっていたわけです。宙返り、キリモミ、上昇反転など、アクロバット飛行です。
 模範飛行がひととおり終わって、急降下をし地上が近づいたところで、エンジン全開で急上昇に入った。400メートルぐらい上がったところでドカーンという音がした。シリンダーが壊れてエンジンがストップしたので、反転して裏返しのまま飛行場に不時着しようと思ったのですが、失速してキリモミ状態になっちゃった。高度400メートルあたりから、4回転ぐらいしましたかね。地面がグァーッと上がってきて、瞬間、これは死ぬなと、もうおしまいだと思いました。
 そう思ってから一秒の何分の一か、正確には判りませんが、自分の親兄弟や友達、いろんなことが走馬燈のごとく閃いて……。すると、バリバリという骨が砕ける音が聞こえたんです。それっきり2日間意識不明でした。


丹波 どこの骨が砕けたんですか?

川口 顎と首の骨、腕・足の骨も折れてました。


      墜落直後はいい気持ち

丹波 地上に激突した時、痛くなかったでしょう。

川口 そうですね。

丹波 痛いというより、むしろ気持ちよかったんじゃないですか。

川口 そうです。激突した直後、いい気持ちになったんですよ。

丹波 臨死体験した人に聞くと、極わずかな時間に全人生を走馬燈のように見る場合が多いようです。川口さんもそうだったんですね。

川口 死ぬと思ったんですが、お役目がまだ残っていたんですかね。

丹波 そうです。あなたが死ぬ時期はきっちり決まっていますよ。どうでしょうか、あと10年は生きるでしょう。ハハハ…。

川口 ハハハ……。でも、2日後意識が戻ってからは、40度の熱が出るし「殺してくれ!」と叫ぶほどの痛みがありました。

丹波 落ちたときは痛くない。意識が戻ると痛い。その理由は簡単です。墜落直前に幽体が抜け出すので、痛みを感じないのです。意識が戻るということは、幽体が肉体に戻る。だから、痛みを感じるのです。


       お花畑で祖父が手招き

川口 それから、お花畑と川を見ました。すると、可愛がってもらったおじいちゃんが「おいで、おいで」と呼ぶんです。一生懸命呼ばれた方へ行こうと思っても、なかなか行けなかったんです。そうこうしているうちに二日経ってしまったんです。

丹波 白光体と出会いましたか。一般には、自分の人生を見たあと出会うんです。そして、白光体は言葉ではなく、念で「あなたは、人間界でどれだけ人のために生きて来ましたか?」と聞いてきますが、どうでしたか。

川口 それはなかったですね。

丹波 でも死ぬということは、皆さんが思っていることと大分違うと感じませんでしたか。

川口 そうですね。だから、今はいつ死んでもいいですね。

丹波 だから、こんなに元気なんですよ。この間、川口さんのドラムを聞きましたが、まるで機関銃ですね。体力を使うでしょう。身体が一度壊れた人間がやることとは思えませんね。

川口 そういう意味では、ドラムはスポーツですよ。


       ベトナム戦争へ慰問

丹波 ところで、ベトナム戦争の戦地へ慰問に行ったんですよね。

川口 当時、バンコックのアメリカバーでドラムを叩いていました。そこへバンコックの日本大使館の人が来て、国連軍の慰問をしてもらいたいと名指しで依頼が来ました。危険だと言われましたが、名指しだったんで行ったんです。

丹波 その根底は、死を恐れていないからでしょうね。

川口 そうかもしれませんね。いろいろな危険な場面に遭遇しましたが、不思議と恐いとは思わなかったですね。でも丹波さん、戦地の人たちから話を聞くと、憶病な人、死ぬのを恐がっている人ほど弾に当たって死んでしまうらしいんです。これが不思議なんです。

丹波 人の死期はきっちり決まっているんです。恐れようが、恐れまいが死ぬときが来れば死にます。
 川口さんは、ドラマーという使命があり、戦後の混乱期の日本の発展に大きく貢献しなくてはなりませんでした。だから、むこうも川口さんを生かしておくんです。
 だから、常々いっているのは、死ぬことを恐れないで下さいということです。死ぬことの恐怖がなければ、心に余裕が出る。心の余裕があれば、人のために尽くそうという気持ちになります。これが大事です。生命が永遠とわかったら、人のために尽くそうという気になるでしょう。これが、どのくらいむこうへ行って千金の重みがでるか……。
 川口さんはその見本ですよ。

川口 とんでもありません。

                                            以 上