2006年新年号

丹波哲郎が語る「死後の世界の実相」

〜第58回〜
《2006年1月〜》



        『週刊大衆』連載
                  平成16年11月8日からの連載記事から

          この連載は1冊の本にまとまり全国書店で販売中
 
    タイトル『オーラの運命(さだめ)』双葉社 税込本体1575円

    宇宙に訊け(そらにきけ) 其の十一

人間、大事なのは愛。
ただしセックスで相手の悪い霊を引き込む危険もある。


  
  ★ 来世の宣伝マンが薔薇色の「死後」を説く


 世の中には異性にモテる奴とモテない奴がいる。私は、どっちかって?

 それは愚問というものだ。モテるに決まっているじゃないか。(笑)

 でも、中学時代までは、不思議なくらい女性に縁がなかったんだな、これが。モテるようになったのは、学徒兵で軍隊に入ってから。それも、立川の航空隊に入ってからだよ。

 余談だが、立川の航空隊には、その後、巨人の監督となる川上哲治がいたんだ。私より一期上で、まあ、よく部下を殴ったもんだよ。出来の悪い私も、ことあるごとに殴られた。

 ただ、航空隊というところは日本の軍隊にあっては、ちょっとばかり進歩的というか、くだけたところがあったんだな。しかも女の子が多かった。だから班ごとに、司令部美人、爆撃班美人、戦闘班美人といった具合に、美人を選定するなんてことをやっていたんだよ。

 その中でも、一番の美人が司令部美人。私は、その司令部美人とちょっとした関係になり、終戦後は家にまで押しかけられ、困ったほどだ。

 あるいは、爆破整理のため兵を連れて外出すると、兵隊を休息させた民家の娘が後で面会に来て、怒られたこともよくあったよ。

 終戦後、GHQの通訳になってからも大いにモテた。

 日本中が食うのに困っていた時代だから、かなりの良家の娘とか女房とか、そうした女性が、GHQが入っていたビルの掃除婦として働いていたんだ。

 こっちは通訳、兼、被女たちを管理する立場にあった。要するに、彼女たちのボスだよ。いやもう、私の奪い合いといっていいほどモテたもんだ。

 ところで、我々が死んで最初に行く精霊界には『残存牲欲の森』があるということは、前に話したな。残存性欲の森にあっては、セックスするのが当たり前。セックスをしないのはスーパーで買い物をして、つり銭をもらわないようなものだ。そして、この残存性欲の森で性欲のとりこになると霊界へ行けない。そうならないためにも、現世でのセックスを疎かにしてはいけないんだよ。

 その意味では、モテる人間のほうが、モテない人間より恵まれている。セックスのチャンスは多いからな。だが、セックスというのは、やみくもに数をこなせばいいというものじゃないんだ。

 諸君の周りにも、セックスを遊びと割り切って、たくさんの異性と楽しんでいる人間がいるだろう。これをうらやましく思う人もいるだろうが、こうした人種にも、それなりに悩みはあるんだ。

 その悩みとは「いつまでも、このままでいいのか」という不安だよ。

 私の知り合いに、こんな女性がいた。
 仮に、A子としよう。
 A子は美貌の持ち主で、20代で同じ会社に勤める男性と結婚。しかし、俗にいう〃性格の不一致〃が原因で1年足らずで離婚した。それからだよ、A子の華麗なる男性遍歴が始まったのは。私のところに相談に来るまでには、それこそ数え切れない数の男とベッドを共にしたそうだよ。


   ★ 色相当数の男と関係した美女。A子は〃やり得〃

 しかしだ、そんなA子もマンションにひとりでいるとき、ふと、空虚な気持ちに襲われるというんだな。

 「このままではダメになる。私を心底、包みこんでくれる男性がいたら、どんなにか幸せか……」

 そんなことを考えるというんだ。
 A子は私の顔を見るなり、こう聞いてきた。
 「私がしてきたことは間違っていたんでしょうか」

 私は「そんなことを考える必要はこれっぽっちもない」と、きっぱりいったよ。

 実は、セックスとい.う営みには、相手の霊を自分の中に引き込む作用があるんだ。これは男にも女にもいえることだ。しかも、引き込む霊は必ずしも良い霊ばかりとは限らない。中には、とんでもない悪霊に汚染された霊の持ち主だっているわけだよ。つまりだ、いろんな相手とセックスするということは、悪い霊を引き込む危険も高くなるということだな。
 プレイボーイ、プレイガールといわれる人たちには、くれぐれも、このことを憶えておいてほしい。私からの忠告だよ。次々に相手を替えてセックスし、その結果、悪い霊を引き
込んでしまうと、その霊によって思わぬ苦しみを背負うことになるぞ。

 さて、A子の場合だが、彼女は相当数の男性と関係したにも関わらず、心身ともにまったく異常がな〜い。これは幸運であり、喜ぶべきことだよ。要するに〃やり得〃だ。それだけ多くの男性の霊と接触し、その霊についている守護霊とも触れ合ったわけだよ。これは貴重な体験であり、多くの魂との触れ合いの輸を広げたという見方もできるだろう。

 魂との知り合いが増えたということは、.仕事に例えれば、名刺が増えたようなものだよ。しかも、A子の場合、その中に悪い知り合いはいないわけだ。それどころか、自分を磨くのに役立った名刺もあるだろう。

 だから、彼女は自分の男性遍歴を否定する必要なんてないんだ。

 「過去を恥じることなく、これからも堂々と、胸を張って生きていけばいい」、私はそういったよ。

 ただし、彼女にも一点だけ、心に留めておいてほしいことがある。それは愛するということの大切さだ。

 愛することは、人に愛を与えることであり、これは善だ。一方、愛されたいと願うことは、他人から愛を奪うことであり、善とはいえない。要するに、愛されることより、愛することのほうが大事なんだ。愛されることばかり望むから、そこに悲しみや苦しみが生まれるわけだよ。

 話を聞く限り、A子は他人に愛されることばかり望んでいるのは間違いない。私はA子に「人を心から愛したことがあるか」と尋ねたよ。すると、A子は小さく、哀しげな声で「ありません」と答えたな。

 月並みな表現だが、人間、一番大事なのは愛だよ、愛。

 愛することの大切さを知り、それを実践する限りは霊界での素晴らしい地位も約束されるだろう。

 このことを忘れてもらっては困るぞ、諸君。

                                       《次回につづく》