丹波哲郎が語る「死後の世界の実相」

〜第54回〜
《2005年6-7月号》



        『週刊大衆』連載
                  平成16年11月8日からの連載記事から

      宇宙に訊け(そらにきけ) 其の七

霊界の存在を確信させる〃生きた見本〃、
それが真の霊能者である。


  
  ★ 来世の宣伝マンが薔薇色の「死後」を説く


 私のことを霊能者宗教家のようなイメージで捉えている人間もいるらしいが、それは大いなる誤解だぞ。私は、そのどちらでもな〜い。
 まず、私ほど宗教に無頓着な人間もいないな。30年近く前に母親が亡くなったときに初めて、うちの宗派が浄土真宗だということを知ったくらいだ。もちろん、霊能者や霊媒としての才能もないよ。
 じゃあ、「丹波哲郎とは何者か」と問われれば、こう答える。
「霊界の宣伝マンだ」
とね。
 霊界の宣伝マンであると同時に、霊界研究家でもあるな。霊界の素晴らしさを宣伝するためには、霊界につ
いて知っていなきゃダメだろう。
 だから膨大な書物を読み、霊界について調査、研究したわけだよ。
 きっかけは、ある友人の死だ。もう50年近く前になるかな。その友人は、いつも「死なんて少しも怖くない」といっていたくせに、いざ自分がガンになって、死期が近いことがわかると、それこそ泣いて泣いて醜態をさらしたんだよ。
 とにかく死にたくないというんだな、これが。人間、死に直面すると、こんなに惨めになるものかと思ったよ。
 このとき私も、つくづく考えた。死は誰にも訪れる。ならば、あんなに惨めな姿をさらすことなく、静かに、カッコよく死ねないか、とね。死を怖がるのは死の世界がわからないからだ。
 そして、もし死後の世界というものが存在するなら、それを知りたい。それがわかれば、死の恐怖もなくなると考えたわけだよ。

 要するに、最初は、自分を納得させるための研究だったんだ。ところが、死後の世界について知れば知るほど、これはやはり、それを知らない人にも、その素晴らしさを教えていくべきじゃないかと思うようになったんだ。
 この頃には、もう死後の世界を確信していたし、死に対する恐怖は雲散霧消していたよ。
 私が霊界の研究を始めて以来、50年近くの間に読んだ本は、さあ、どれくらいだろう。延べ数千冊に及ぶのは間違いない。
 1冊の本を10回、20回と読んだこともあるからな。私の書斎をみてもらえばわかるが、そこには霊界に関する本以外は、まったくな〜い。
 よく「丹波哲郎は、なぜ見たこともない霊界を知っているんだ」というヤツがいるが、私の話は、私独自の説や思いつきじゃないんだ。受け売りみたいなものだよ。
 しかし、いい加減な受け売りじゃないぞ。私が50年近い歳月をかけて学んだ中には、たとえば世界に名だたる学者たちの研究成果も網羅されている。
 ロンドン物理大学総長のサー・オリバー・ロッジ、ノーベル医学賞を取ったフランスのシャルル・リシェー、これは野口英世以上の学者だよ。それからデューク大学のライン教授、モントリオール神経研究所のベンフィールド博士、他にもエリザベス・キューブラー=ロス博士ら、まさにキラ星のごとき超一流の学者の研究成果も含まれているんだ。


   ★ 明治時代の長南年恵は数少ないホンモノだ!

 つまり、50年近い歳月をかけて読んだ数千冊分もの知識を、諸君の時間と労力を節約するために、私がその最大公約数をピックアップして、わかりやすく説明しているというわけだよ。
 そして、そのような確固たるベースがあるからこそ、私の本は売れに売れ、映画『大霊界』も大ヒットしたんだ。老若男女を問わず、大勢の人に受け入れられたんだよ。
 私自身は霊能者でも超能力者でもないが、この世には霊能者、超能力者は確かに存在する。10人中8人、9人はイカサマだが、正真正銘のホンモノもいるんだ。ホンモノは世間一般から見れば、かなり普通じゃないわけだよ。
 霊界に住む霊人には透視能力があり、予言能力があり、人間界でも、こういう普通じゃない者たちは霊人と同じような能力を持ち合わせているケースが多いんだ。
 たとえば予知、予言能力だ。これは自分の将来も全部わかる。何月何日に結婚し、その何年後に子供ができ、さらにいつ、どこで死ぬかまでわかってしまうんだ。
 霊能者として世界で最も有名なのは、エマニュエル・スウェーデンボルグだ。彼はゲーテの『ファウスト』のモデルであり、同時代の哲学者カントが「人類史上、こんな人物がいるとは思わない」といった人物だけが、彼も自分の死を予言している。自らの死を1年前に予言し、その日に、かくかくしかじかの病気でこういう状態で死ぬということを書き残し、その通りに死んだんだ。
 日本にも素晴らしい霊能者はいるぞ。なかでも、私が注目するのが明治時代の長南年恵だ。
 長南年恵は自分に授けられた霊能力を、まったく無私の心で、人助けのために使った女性で、9割以上の病人を治したともいわれている。だが、民衆を惑わした容疑で、警察に60日間拘留されたんだよ。
 この間、何も食べない、何も飲まない、トイレにも行かない。拘留されている間、ずっと見張られていたから、これは疑いようのない事実なんだ。
 彼女は44歳で亡くなった。そして、やはり自分の死を周囲に予言している。死ぬ間際の写真を見ると、どう見ても20歳以上には見えないんだ。
 身長は140cmそこそこ。男2人がかつぐ酒樽を軽々と持って走ったとか、拘置所で空瓶の中に霊水をいっぱいにわき出させて見せたとか、さまざまな逸話が残っている。知れば知るほど、人間とは思えないんだな。
 では彼女は、いったい何者か? 私からすれば、まさに霊人そのもの。霊界の存在を確信させる、生きた見本なんだよ。私は近い将来、彼女の映画をつくろうと考えている。それは映画を通して、霊人が実在し、霊界が確実に存在することを証明しようという試みでもあるんだ。

                                       《次回につづく》