80.一度の過ちでも地獄へ堕ちるのか?

   悪事を一度働いた人でも、深く改心して善人にをる人もいます。
   そういう人でも、一度の悪事のために地獄へ堕ちるのでしょうか。


悪事を行なうと地獄へ堕ちるという考えは、仏教で説く「自業自得」に基づいている。
一般的に軽い意味で使われる「自業自得」と宗教的な意味での「自業自得」とは、
その重味において雲泥の差ほどもあることをまず覚えておいて欲しい。
つまり、本来の「自業自得」とは、たとえば、殺人なら殺人を実際に身をもって行なった行為(身業)だけではなく、
言葉で表現すること(口業)や、心の中で思うこと(意業)すらも含まれているのである。
人間社会では、いくら「お前を殺してやる」と叫んでみたところで殺人罪にはならないし、
まして心の中で思っただけでは何の罰も受けない。
しかし、宗教的意味での「自業自得」では、これだけのことでもりっばに罪の対象となり、
地獄へ堕とされても仕方がないのである。
実際には、心の中で思ったことまで罪の対象となったのでは、
いかなる悪事も働かなかったと言える人間は一人もいないだろう。
だから、「自業自得」の教えは、地獄に堕ちることを他人事とは考えず、
日々、自戒の念をもって行動するように、ということである。
言い換えるなら、この世で罪の償いを済ませてしまったものを除き、う
まく罰をまぬがれたと思っていた行為や、心の中で犯してきた様々な悪事は、
あの世で罰として戻ってくることを肝に銘じて生きよ、という教えなのだ。
さて、質問の回答であるが、一度であろうと何度であろうと、悪事を働いたことには変わりない。
しかし、ちゃんと罪の償いを済ませていれば、あの世で再度罰を受けることはないし、
そのことで地獄へ堕とされることもないだろう。


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