18.線香をたてるのはなぜ?
故人の霊前や仏壇、墓前などに線香を捧げますが、もともとはどのような意味があるのでしょう。
焼香は仏教儀礼につきもので、釈尊在世当時から行なわれていました。
日本には、推古天皇(628年没)の御世に淡路島に香木が漂着したと『日本書紀』に記されています。
唐の鑑真和尚(753年来朝)が仏典とともに、香木を携えてきたというのが香流行のはしりといわれています。
香は特に夏など部屋の臭気を消すために用いましたが、神仏の食料ともいわれ、高価なために珍重されました。
その食料に関する記述は、西暦5世紀頃に書かれたという古代インドの仏教教典『倶舎論』の中にある。
なかでも興味深いのは次のようなくだりである。
「死後の人間が食べるのは〃匂い〃だけであり、生前、善行を積み重ねた死者は良い香りを食べ、
悪業の限りを尽した死者は悪臭しか食べられない……」
これから推定すると、線香は、本来、死者への〃供物〃という意味があったものと考えられる。
良い香りのする線香をたいて、どうぞお召し上がりください、と捧げるわけだ。
同時に、善行を積み重ねた死者でなければ良い香りを食べられないわけだから、
故人の霊前などに捧げる際には、あの世で良いポジションにつけますように、という遺族の願いがこめられていたのだろう。
その他、線香から立ち昇る煙に乗って天(つまり霊界)へ死者が往くものと考えられていたという説もある。
また、悪霊が好むのは悪臭、なかでも死臭を最も好むところから、
線香をたくことによって悪霊を遠ざける意味も当然あるだろう。
ところで、本来の線香の匂いはもっと違っていた。
現在のように抹香臭い匂いはしていなかった。もっと良い香りがしていたはずである。
いまの線香が、むしろ悪臭に近いと断ずるのは、私ひとりの考えであろうか。
参考 お葬式プラザ http://www.osoushiki-plaza.com