１４．死者を北枕に寝かせるのはなぜか？
遺体はなぜ、北枕に寝かせるのですか。
北という方角にはどういう意味がありますか。
これも民俗的・宗教的な習俗による〃死者儀礼〃のひとつで、
釈迦涅槃の像にならうものといわれている。
つまり、釈尊が入滅した際、「頭北面西右脇臥｣
(頭を北に、顔を西に向け、体の右側を下に）の姿勢をとったと
伝えられるところから由来しているという。
この由来は『臨終方決』『増一阿含経』『長阿含遊行経』『涅槃経』など各種経典にみられる。
いずれにしても、死者が釈尊にあやかって、霊界で
少しでも厚遇を受けられるように、という遺族の願いがこのような形式に結びついたもののようである。
また、北という方角にはどういう意味があるのかについては、はっきりしたことは不明である。
陰陽道でいう｢鬼門｣(忌み嫌う方角。丑寅＝北東のすみ）と関係があるのかもしれないが
明言はできかねる。
数々残っている〃死者儀礼〃は、その起源をたどると、
ほとんどがこうした遺族の死者に対する願いに発したものか、
死という不可解な存在に対する畏れに基づくものかどちらかである。